初心者がutf8でLaTeXとBibTeXを使うための一通りの準備(Mac編)

今回はMacでのTeXのインストールから設定までのメモ。基本的な利用に加え、他の人が公開しているオリジナルのパッケージや、BibTeXでの文献データベースを利用するための設定までを紹介。なおタイトルにある通り、文字コードはutf8で使う環境になる。

コマンド操作も行うのでターミナルの起動ができる必要があるが、前提知識はそれくらいだと思う。なお今回の環境はOS X Mountain Lion。*1

コンテンツ

  • MacTeX 2012
    • インストール
    • 確認
  • エディタの設定・インストール
  • パッケージ・環境変数の設定

MacTeX 2012

Mac向けのTeXディストリビューションの中ではMacTeXがメジャーなようで、今回はこちらをインストール。*2

インストール

ミラーサイトから「mactex20120701.pkg」(日付によってはファイル名は微妙に変わるかも)をダウンロード。普通のソフトのインストーラと同じ手順で、TeXLive 2012、Ghostscript、各種統合環境などがインストールされる。詳しい中身は参考サイトに解説がある。

インストールするソフトを選択するには、「インストールの種類」の段階で「カスタマイズ」で選ぶようだ。MacTeX2012には、Ghostscriptも日本語が使えるバージョン(9.05)が入っているので、標準設定で進んでも問題なく使える。*3
f:id:hnsn1202:20120815170201p:plain

参考:

確認

ptex -kanji=utf8

ターミナルで上記のように打ち込んで以下のように帰ってきたらOK。utf8にも対応済み。

This is pTeX, Version 3.1415926-p3.3 (utf8.euc) (TeX Live 2012)
restricted \write18 enabled.

エディタの設定・インストール

TeXShop

MacではTeXShopを使っている。小さい画面で使うにはシンプルでいいと思う。MacTeXにデフォルトで入っているのでインストール済み。あとは環境設定で設定を変更する。以下、変更のあるタブごとに紹介する。

f:id:hnsn1202:20120815171008p:plain

  • エディタの文字コードを変更。「UTF-8」を選択(忘れると文字化けの原因になるので注意)


f:id:hnsn1202:20120815174722p:plain

  • 「デフォルトのコマンド」は[LaTeX]を選択
  • 「デフォルトのスクリプト」は[Tex + DVI]を選択


f:id:hnsn1202:20120815174733p:plain

  • 「BibTeXエンジン」を「pbibtex」に変更
  • TeX + dvips + distiller」内の「LaTeX」を以下のように変更*4
simpdftex platex --mode dvipdfmx --extratexopts "-synctex=1 -kanji=utf8"


f:id:hnsn1202:20120815174744p:plain

  • 「utfパッケージ対応」「UTF-8-MACをUTF-8に自動変換」にチェック

ここまで終わったらTeXShopを再起動。

参考:TeXShop - TeX Wiki

JabRef

こちらは全OS共通。公式サイトからダウンロードしてインストール。文献管理ソフトが別に必要ない人、あるいは他のBibTeXソフトを利用している人はスルーして問題ない。

ファイル壊れているという警告が出て起動できない場合は、対処法を別ののエントリに書いたのでそちらを参照。*5

[Option] -> [Preferences]で設定を変更。[General]タブの中で言語と文字コードを選択。文字コードは「UTF-8」で。
日本語が豆腐文字になるようであれば[Appearance]タブの[Set table font]で日本語が使用可能なフォントを選ぶ。
f:id:hnsn1202:20120815192614p:plain

パッケージ・環境変数の設定

様々な人がLaTeX用の自作のパッケージを公開している。そうしたパッケージを拾ってきて自分でも使えるようになれるとさらに便利なので、そうした追加の設定について紹介。

隠しファイルの表示・非表示

ここからの作業では、隠しフォルダの中で作業をするので、これらを見えるようにする。Finderの環境設定では設定できないので、ターミナルから設定・再起動をする。作業がすべて終わったら非表示にするといい。

#表示する場合
defaults write com.apple.finder AppleShowAllFiles TRUE
killall Finder

#非表示に戻す場合
defaults write com.apple.finder AppleShowAllFiles FALSE
killall Finder

スタイルファイルの置き場所

個人で用意したパッケージなどをインストールする。追加のstyファイルとbstファイルはそれぞれ以下の場所に置くことで使えるようになる。*6

  • styファイルの置き場所:/usr/local/texlive/texmf-local/tex/latex/local
  • bstファイルの置き場所:/usr/local/texlive/texmf-local/bibtex/bst/local

それぞれの場所にコピーしたら、ターミナルで以下のコマンドを実行。

sudo mktexlsr

このコマンドはフォルダの中身を更新した時いつも実行するようにする。これでパッケージのインストールは完了。なお、パッケージファイルの文字コードに注意。SJISで書かれたファイルはutf8に変更してから保存する必要がある。

BibTeXの環境変数

BibTeXの文献データベースファイルも、TeXが認識できる場所に置く必要がある。私の場合Dropboxで文献DBを同期させたいので、逆にDropbox内のフォルダをTeXが認識できるように設定する。

そのために、/usr/local/texlive/2012/texmf/web2c/texmf.cnfを編集する。普通のテキストエディタで開けるが、最初はファイルにロックがかかっているので、ファイルとフォルダのアクセス権を変更しないと編集ができない。以下の手順でロックを解除する。

  • texmf.cnfを右クリック -> 「情報を見る」
  • 右下の鍵マークをクリック、PCのパスワードを入力
  • 一番下の「共有とアクセス権」の部分を変更して書き換え可能に変更
  • ファイルが収まっているweb2cフォルダに対しても同様に上記の操作を行う

f:id:hnsn1202:20120815181906p:plain
これでtexmf.cnfが編集可能になる。後々編集し直したいときは、ターミナルで以下のコマンドを打てば、隠しファイルになっていても編集できる。

open -a textedit /usr/local/texlive/2012/texmf/web2c/texmf.cnf


ここからは編集の内容。例えば~/Dropbox/Bibliographyに文献DBを保存している場合、以下のように書き換える。他に保存場所があればそれに合わせて編集する。

このファイルの225行目付近を変更。もともとの部分はコメントアウトして、以下のように書き加える。

% pBibTeX bibliographies and style files.
%BIBINPUTS.pbibtex       = .;$TEXMF/{pbibtex,bibtex}/bib//
BIBINPUTS.pbibtex       = .;$TEXMF/{pbibtex,bibtex}/bib//;~/Dropbox/Bibliography//

続いて305行目付近を変更。もともとの部分はコメントアウトして、先ほどと同じように書き加える。

% BibTeX bibliographies and style files.  bibtex8 also uses these.
%BIBINPUTS = .;$TEXMF/bibtex/bib//
BIBINPUTS = .;$TEXMF/bibtex/bib//;~/Dropbox/Bibliography//

これで、設定したフォルダ内に文献DBを保存すればBibTeXが認識してくれる。セミコロンで区切ればいくつでも指定できるし、スラッシュ2つでそのフォルダ以下のすべてのフォルダという指定になる。

参考: [Mac]ファイルがロックされて編集ができない。アクセス権を変更しても解除できない。

補足:jsクラスの余白について(2013.04.28追記)

個人的に困っているけど根本的な解決策が見つかっていないので、対処療法を補足。実はjsarticleなどのクラスファイルを使ったときに、なぜか余白が偏っている(左下にずれている)のを修正できずにいる*7

手っ取り早くgeometryパッケージで指定してやればその通りに出力される。ついでに余白の大きさも自由に変えられる。

\usepackage[top=30truemm,bottom=30truemm,left=30truemm,right=30truemm]{geometry}

当面はこれで解決できるが、また今後根本的な解決策が見つかったら書き直す。

参考:TeXのjsarticleで余白設定 - joker8phoenixの日記

さいごに

Macの使い方はまだわからないことが多いけれど、TeXのインストールはこれで一通りだろうか。これでBibTeXなども、各自が利用する環境に合わせてカスタマイズする方法もある程度紹介したので、だいぶ選択肢も広がったのではないだろうか。足りない部分や修正が必要な部分はご指摘いただけるとうれしい。また、Windows、Ubuntuでのインストール方法も、過去のエントリで紹介しているので、また必要な人は合わせて見ていただけるとうれしい。

脚注

*1:MacBook Air(Late2010)を使用。

*2:ベースはTeXLive2012なので、設定については、Ubuntuでのインストールについて書いたときと割と重複する部分も多いだろう。

*3:このカスタマイズには後から気づいたので、必要ないTeXWorksとBibDeskだけ後からアンインストールした。

*4:TeX」の部分も変えた方がよければ、 「simpdftex eptex --mode dvipdfmx --extratexopts "-synctex=1 -kanji=utf8"」ということになるらしい。正直詳しくはわからない。

*5:2013.04.09追記

*6:認識できる他の場所の一覧を調べるには、ターミナルで「kpsewhich -show-path=.sty」「kpsewhich -show-path=.bst」というコマンドを実行すればよい。それぞれのファイルをシステムが探しに行くフォルダを表示してくれる。もしデフォルトの設定で保存場所が変わっていたら、これで確認するとよい。その中でも、texmf-localはTeXのシステム更新に影響を受けないため、個人で用意したファイルならばtexmf-local以下の場所が推奨される模様。

*7:TeXShopを使わないでコンパイルしても同様なのでなおさら困ってる。